プロでも案外わかっていないハンドのルール

 J1リーグ第13節、ガンバ大阪vsFC東京

 やや物議を醸したハンドのシーン。だいぶ集音マイクに声が拾われていて、抗議の内容に違和感を感じたので書いてみる。

2019-2020シーズンからルールが変わっている

 問題のシーンは後半28分、右サイド深くをとったアダイウトンのクロスがスライディングで飛び込んできたキム・ヨングォンの左手に当たる。アダイウトンが覚えている数少ない日本語であろう「ハンド!ハンド!」と大声を上げると、おそらく副審が旗を上げ、主審がペナルティスポットを指差す。

 そこでガンバの選手たちは猛抗議。キーパー東口を皮切りにこんな感じ。最初は東口だがあとは誰だかわからない。

「手ェくっついてたって!」
「見てた!?はっきり見てた!?」
「ルール違ってるって!」
「手ェくっついてたらセーフじゃないん!?」
「開いていたらハンドやけど!」
「全然故意じゃないししかも!」
「あんな距離で当てれるわけないやん」
「くっついてたやん!(副審に)さっきから見てないあなた!見れてない」

 反響の良いスタジアムなのかここまで抗議の声が鮮明にマイクに拾われるのは稀。文句言いたくなるのはまあわかるし、真剣に試合に臨んでる証拠だと思うけど、最後のは良くないよね。ただ副審を侮辱しただけ

 ヨーロッパでいう2019-2020シーズンから、ハンドのルールが微妙に改正されているのはご存知だろうか。

 一般にハンドかどうかで重視されていると思われている基準である

「意図的にボールに触れる」

 という部分は今のルールにはない。

 追加されているのは大雑把にいうとこんな感じ

・【攻撃側】選手の手に触れたボールがチャンスや得点に繋がればハンド
・【守備側】手が”不自然”な位置にある状態でボールに当たったらハンド

 今回の件は守備側である。上記の抗議内容から取り上げたいのは3点ある。

「全然故意じゃないししかも!」の件

 これが一番ひどいクレーム。昨年のルール改正で一番話題に上がっていた項目のはず。確かにかつては「故意かどうか」は大きな要因だったけど、主審の主観に左右されすぎて、本当に微妙な場面ではコインを投げるようなただの決断になってしまうことから、基本的には当たったらハンド、に変わっている。

 さすがにプロの選手として、これは知っておかなきゃいけないんじゃないかと思った。誰の発言かはわからないけど、立ち位置的に守備の選手でしょ言ったの。

「あんな距離で当てれるわけないやん」の件

 これもほとんど同じだけど、当てにいったのかどうかは基準じゃない。というかあそこで狙って当てに行ってたら退場かもよ。PKになるファールにはレッドを出さないのルールも、完全に故意のプレーには赤出るから。ちなみにあのくらいの距離なら本気出せば当てられると思うよ。

「手ェくっついてたって!」の件

 これはわかる。あのプレースピードで見ていれば手を体に密着させていたように見えたかもしれないね。しかし・・・

 残念ながら離れている。そして問題の左腕は肩より上にあがっている。ここまで副審が総合的に判断していたのかは怪しいが、事実は事実。VARがあったとしてもこれはPKだ。

スッキリしないのは

 「3番のハンド」って審判が言ったことだね。そりゃ怒る。あの場面で昌子はだいぶ離れたところにいたから、「どうやったら俺がハンドやねん」と言いたくなるのは間違っていない。ハンドの一件において、審判団の犯したミスはこれ。選手も納得できないわけだ。ただし判定は正しかった。

 もう一つ言えば、前半終了間際の藤春のゴール取り消しは誤りだった。シュートが打たれた時点で、副審に一番近いところに帆高が転がっていたからオンサイドだった。簡単ではないと思うけど、これは確実に判定しないといけない。このゴールが決まっていれば前半時点で2-1だった。後半の展開は大きく変わっていたはずだ。

 今回取り上げたかったのは誤審の件じゃなくて、ルール改正が案外知られていないんだなということ。サッカーのルールは思っているよりコロコロ変わる。万人が知っているのはキックオフに二人並ばなくなったことくらいで、交代の時は一番近いラインから出なければ遅延行為、も最近のJリーグでは形骸化しているように思う。

 なんかヨーロッパではオフサイドのルール改正の議論もしているだかこれからするという感じらしい。細かいっちゃ細かいけど変わった部分はちゃんと押さえておこう。

最新情報をチェックしよう!

コラムの最新記事4件